先日、別のコラムで「外食業の特定技能受け入れ停止により、片手間の紹介会社がドライバー分野に流入してくるリスク」について解説しました。
※前回コラム:外食人材受け入れ停止でドライバー人材へ?”片手間の紹介会社”に任せるリスクとは
しかし、流入してくるのは事業者だけではありません。候補者となる外国人材自身も、外食業からドライバー分野へ流れてきているのが、いま現場で起きている動きです。
そして、この流入してくる候補者層には、運送会社の経営者・採用担当者の方が知っておくべき見落としがちな落とし穴があります。今回はその点を整理します。

2026年4月13日の特定技能「外食業分野」新規受付停止により、これから外食業で日本に来ようとしていた外国人候補者は、行き場を失っている状況です。
具体的には、
・海外で外食業の特定技能1号試験に向けて勉強してきた候補者
・留学生として日本にいて、卒業後に外食業の特定技能1号への変更を予定していた候補者
など、外食業を志望してきた人材が、現時点で特定技能でのキャリアを描けない状態に置かれています。
そして、この層が「現時点で受け入れ上限に余裕がある自動車運送業(ドライバー)分野」に流れているというのが、今の構図です。

ここで押さえておきたいのが、外食業を志望してきた候補者は、ドライバー分野の他の候補者と比較して、日本語力が比較的高い傾向にあるということです。
ただし、誤解のないように先にお伝えすると、これは「外食業を目指していたから日本語力が高い」というわけではありません。特定技能1号の日本語要件そのものは、外食業もドライバー(自動車運送業)も同じレベル(JLPT N4相当)です。
※外国人ドライバーに必要な「日本語力」は?N4合格の目安とレベル
違いを生んでいるのは、日本語学習に費やしてきた期間の長さです。
そもそも外食業は、求人数に対して志望者の方が多い構造であったため、内定が決まるまでに時間がかかるケースも珍しくありませんでした。
その期間中も日本語学習を継続する候補者が多いため、外食業を目指して動いてきた候補者の多くは、結果として長期間にわたって日本語学習を積み重ねており、要件レベル(N4)を上回る会話力・語彙力を身につけているケースが少なくありません。
そのため、ドライバー分野の他の候補者と並べたときに、「会話力や面接での受け答えがしっかりしている印象を持たれやすい」これが、外食業から流入してくる候補者の特徴です。

しかし、ここで一度立ち止まっていただきたいです。
日本語力が高いという理由だけで採用判断をすることは、運送会社にとって大きなリスクになり得ます。
理由は、構造的に二つあります。
外食業を希望していた候補者にとって、ドライバーは第一志望ではありません。本来やりたかったのは飲食店での接客や調理であり、ドライバー分野はあくまで「日本で働ける手段」として選ばれているに過ぎないケースが少なくありません。
動機が「とにかく日本に来たい」「特定技能のビザが取れればよい」という候補者は、就労後のミスマッチを起こしやすく、現場での定着が難しくなります。
「外食業の受付停止は一時的なもの」という見方も業界内には存在します。受け入れ上限の見直しや、運用方針の変更によって、将来的に外食業の受け入れが再開される可能性はゼロではありません。
「とりあえずドライバーで日本に入って、状況を見て他職種に移る」という発想を持っている候補者を見抜けないまま採用してしまうと、せっかく教育コストをかけても短期間で離職されるという結果につながりかねません。

外国人ドライバーの採用・受け入れには、他業種と比べても特殊なコストが発生します。
・運転教育の費用(入国前・入国後)
・外免切替の費用もしくは教習所の費用
※外免切替と教習所での免許取得を比較!外国人ドライバー採用で選ぶべきはどっち?
これらを積み上げると、ひとり採用するごとに数十万円〜数百万円規模のコストが動いていることになります。
ところが、運転免許を取得して乗務を開始した矢先に、「やっぱり外食の道を探したい」と離職されてしまえば、そのコストは丸ごと回収不可になります。
“「日本語が上手で、面接の印象が良かったから採った」という選び方が、結果として最も高くつく。”
これが、いま起こりかけている事態です。

では、外食業からの流入候補者を採用検討する際、何を見るべきか。特に重要なのが次の3点です。
面接に入る前段階で、「この候補者がもともと外食業を志望していた人材ではないか」を、紹介元の登録支援機関にあらかじめ確認しておいてください。
本来の希望が外食業だった候補者であれば、その情報を踏まえたうえで以下の②〜③を深掘りする面接設計に切り替えることで、見極め精度は大きく変わります。
紹介元がこうした候補者の背景情報を把握していない、もしくは共有を渋るような場合は、それ自体が候補者を十分にスクリーニングできていない紹介体制のサインとして警戒しておくべきです。
「日本で働きたいから」ではなく、「なぜ運送業なのか」を、自分の言葉で説明できるかを確認してください。曖昧な返答や、面接官の意図を読みすぎた優等生的な回答が続く場合、動機の浅さを示唆します。
外食業を希望してきた候補者は、運転経験が浅い、もしくは免許そのものを持っていないケースもあります。母国での運転歴、走行距離、事故歴の有無など、ドライバーとしての実務適性に関する具体的なヒアリングが欠かせません。
外食業の受け入れ停止は、ドライバー分野にとっては「日本語力の高い候補者が急増する」という、一見プラスに見える現象を生み出します。
しかし、その候補者層の本質を見誤ると、採用コストと教育コストを丸ごと失うリスクを抱え込むことにもなります。
特定技能ドライバーの採用において、本当に見るべきは、
・日本語力ではなく、ドライバー職を選んだ動機の具体性
・紹介スピードではなく、候補者の本気度を見極めるためのプロセス
・候補者数の多さではなく、運送業で長く働きたい人材かどうかの見極め
です。
紹介会社を選ぶ際にも、「日本語が話せる候補者をすぐに紹介できます」というセールストークだけで判断するのではなく、候補者の動機や適性をきちんと見抜いて選別しているかどうかを確認してください。
外国人ドライバーの採用・受け入れについてご不安な点がございましたら、ぜひ一度ニホントまでご相談ください。
▼ この記事を書いた人 ▼

大学卒業後、大手人材会社に入社し、事務職派遣部門で新規・既存営業に従事。2022年から、米国発オーディオブランドの日本法人にて、SNS運用・プレスリリース作成・製品コピーライティングなどのマーケティング業務を担当。2025年、株式会社ニホントへ入社。趣味はプロ野球観戦と海外サッカー観戦。