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外国人ドライバーの免許取得費用、会社が立て替えたら違反?特定技能の禁止契約と適法な対応を解説

2026/05/01 コラム

特定技能外国人ドライバーを採用する際、多くの運送会社が頭を悩ませる問題のひとつが「運転免許取得費用の負担」です。

大型・中型免許の取得には数十万円のコストがかかります。会社が立て替えてあとで回収したい、あるいは一定期間勤務してもらえたら免除してあげたい—そう考えるのは自然なことです。ところが、善意で設計した契約が、実は法令違反に当たる可能性があるケースも見受けられます。

今回は2025年に開催された特定技能協議会(自動車運送業分野)で入管庁から示された公式見解も踏まえ、「やってはいけない契約」と「適切な対応」を整理します。

なぜ運転免許取得費用が問題になるのか

特定技能1号(自動車運送業分野)では、受け入れ企業は外国人労働者に対して「不当な財産上の不利益を与える契約」を結ぶことが禁止されています(特定技能基準省令第2条第1項第4号リ)。

運転免許取得費用をめぐる契約は、ここに抵触するリスクがあります。会社が費用を立て替えてあとで回収する場合、「どのような条件で、どう回収するか」によって、適法にも違法にもなります。

絶対にNGな契約パターン

入管庁の公式見解によれば、以下の2つのパターンはいずれも「不当な財産上の不利益を与える契約」に該当し、禁止されています。

【NGパターン①】勤続年数を条件とした貸付免除契約

「○年間勤務すれば、貸付金の返済を免除する」という内容の契約。一見、外国人労働者にとって有利なように見えますが、裏を返せば「○年間辞められない」というプレッシャーを与えることになります。これは「停止条件付き貸付免除契約」と呼ばれ、在留資格の基準に違反します。

【NGパターン②】退職時に残額を一括返済させる契約

「退職する場合は、残りの返済額をまとめて支払うこと」という内容の契約。退職するハードルを不当に高くするものとして、同様に禁止されています。

①か②の条項を片方だけ削除しても、適法にはなりません

ここで一点、重要な注意があります。

「②の一括返済の条項だけ削除すれば問題ない」と考えるケースがありますが、入管庁の見解は異なります。

「一括返済の条項を削除しただけでは適法にはならない。①の停止条件付き免除契約自体がすでに違反要件に該当する」

①と②はセットで違反なのではなく、それぞれ単独で違反になりえます。①だけ残した契約も、引き続き問題があると入管庁は判断しています。

「では、登録支援機関に相談すればいい」と思われるかもしれませんが、相談先の選び方にも注意が必要です

そもそも、自動車運送業分野の特定技能は制度の歴史が浅く、ドライバーの就労実態や業界特有のルールを深く理解していない登録支援機関も少なくありません。2026年4月に外食業分野の新規受け入れが停止されたことで、これまで外食業をメインに扱っていた登録支援機関の一部がドライバー分野へ参入しようとする動きも出ています。

こうした事業者に共通するのは、在留資格の手続きや生活支援はできても、免許取得プロセスへの対応力・安全運転教育・就労後の継続支援といった「ドライバー固有の対応」が整っていないという点です。他の職種と異なり、ドライバーはこの部分が不十分なまま現場に出ると、事故リスクが直接発生します。「紹介して終わり」の支援体制では、受け入れ企業が後のリスクをすべて負うことになります。

登録支援機関・採用支援会社をどう見極めるべきか、またドライバー分野に参入してきた事業者にどのようなリスクがあるかについては、以下のコラムで詳しく解説しています。

外国人ドライバーの採用支援会社を選ぶ前に知っておくべきこと|タイプ別の強みと限界
外食人材受け入れ停止でドライバー人材へ?”片手間の紹介会社”に任せるリスクとは

では、どうすれば適法に費用を回収できるのか

特定技能の運用要領(自動車運送業分野)でも入管庁の協議会回答でも、以下の2つのアプローチは適法とされています。

【OKパターン①】給与からの定期分割控除

外国人労働者の同意を得たうえで、毎月の給与から一定額を分割控除する形で費用を回収する方法です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。

・控除対象の費用が外国人本人の利益になるものであること
・本人が十分理解していること(母語での説明が望ましい)
・控除額が実際の費用を超えず、合理的な金額であること

また、雇用契約書や労使協定に明記し、労働基準法の賃金控除規定(第24条)を遵守することも必要です。

【OKパターン②】勤続後に賞与・手当として支給する形

「○年勤続したら、免許取得費用相当額を賞与または手当として支給する」という設計です。これは「貸し付けて後で返させる」のではなく、「後払いで支給する」形のため、不当な拘束には当たりません。労働関係法令を遵守する限り、適法です。

実務上のポイント:契約書の見直しを

すでに特定技能外国人ドライバーを受け入れている企業、または現在採用を進めている企業は、雇用契約書・覚書などの関連書類を今一度確認することをお勧めします。

チェックポイントは以下のとおりです。

・「○年勤務したら免許費用を免除する」という条項がないか
・「退職時に残額を一括返済する」という条項がないか
・上記いずれかに該当する場合は、適法な形(定期控除 or 事後支給)への変更が必要

まとめ

「善意で設計した契約が法令違反だった」というケースは、特定技能の運送業分野で実際に起きています。登録支援機関に相談しても、制度の細部まで正確に把握していないことがあるのが現実です。

私どもでは、特定技能制度の立ち上げ当初から運送業界の外国人採用・育成に携わり、在留資格・労務・現場教育の各側面から企業様をサポートしてきました。自社の対応が適切かどうか、どう対応すべきか気になる場合は、お気軽にお問い合わせください。

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