2024年4月から適用された時間外労働の上限規制、いわゆる「物流2024年問題」。これは、深刻なドライバー不足をさらに加速させるものとして現場に重くのしかかっています。ただでさえ「なり手」がいない欠員状態に、この法規制がさらに拍車をかけているのが実情ではないでしょうか。
そんな中、政府は特定技能の対象分野に「自動車運送業」を追加しました。これにより労働力不足解消の一手として在留資格「特定技能」の外国人ドライバーを雇用できるようになりました。
しかし、これを手放しで喜ぶ声ばかりではありません。「言葉は通じるのか?」「日本の道路で事故を起こさないか?」現場には慎重論も根強くあります。 今回は、外国人ドライバー採用が抱える「メリット」と「デメリット」を整理し、自社にとって検討すべき選択肢となり得るのかを考えます。

まずは、なぜ今これほどまでに「外国人活用」の声が上がるのか、そのポジティブな側面を見ていきます。
これが最大のメリットです。2024年問題により、1人あたりの労働時間が短くなるため、同じ仕事量をこなすには物理的に「人数」を増やすしかありません。しかし、国内の若年労働人口は枯渇しています。同じパイ(日本人)を他社と奪い合う消耗戦から抜け出し、「外国人材」という全く別の労働市場にアクセスすることで、トラックの稼働率を上げ、機会損失を防ぐことが可能になります。
日本のトラックドライバーの平均年齢が高齢化する一方(50歳前後)、特定技能で働く外国人は20代〜30代が中心です。また、来日する外国人のほとんどが「出稼ぎ」を目的としているため、日本人が嫌がる、夜間配送や体力仕事など、いわゆる「キツい」仕事も給与が見合えば働きたい人はたくさんいます。
国選びさえ間違えなければ、高い運転のポテンシャルを持っている候補者もいます。例えば、ネパールにおいては日本と同じ「左側通行・右ハンドル」であり、また、狭路や未舗装路、山岳地帯など、日本よりも過酷な環境でドライバーという職業で大型車両を運転していた経験者も多く 、車両感覚やハンドルさばきの基礎レベルが高い人材が豊富にいるという特徴があります。

一方で、外国人ドライバーの採用は、工場や建設現場の外国人採用とは全く異なる「難しさ」があります。ここを理解せずに飛びつくと、採用後に大きな負担を抱えることになります。
最大の問題は「運転免許」です。彼らが母国の免許を持っていても、そのまま日本のトラックやバスを運転することはできず、入国してから日本の免許を取得することになります。日本の免許を取得するには、「教習所に通い」免許試験場で本免試験を受けるか、母国の免許を日本の免許に切り替える「外免切替(がいめんきりかえ)」の試験を受ける必要があります。「教習所に通う」場合は、教習期間が必要になり、「外免切替」の場合は、免許試験場によっては試験まで長い待ち時間を要する可能性があります。つまり、採用しても即戦力として明日から乗務というわけにはいかないのです。
特定技能の要件として、「日本語能力試験 N4以上(日常会話レベル)」とありますが、N4レベルはあくまで基本的なやり取りができる水準です。物流現場で求められる、「積み込み」「検品」「伝票確認」、「配送先での臨機応変な対応」など、専門用語や細かいニュアンスまで完全に理解させようとすれば、入社後の教育負担は日本人社員以上にかかるのが現実です。
日本国内にいる外国人の転職者の採用でも、ビザの切替に約3カ月程度、海外から人材を採用する場合においては、面接から入国までに半年以上の時間がかかることも珍しくありません 。また、人材紹介料に加えて免許取得や安全運転教育のための費用や本人の家賃の一部負担、渡航費や就労後に外国人の生活を登録支援機関に委託する支援委託費(※免許取得費用や家賃については、給与次第では会社が負担しなくても採用できる場合があります。)なども必要です。 「急ぎで安く人を雇いたい」という現場のニーズと、実際にはギャップがあります。
こうして見ると、外国人ドライバーの採用は、決して安易な「切り札」ではないことが分かります。 若い労働力を確保し、トラックの稼働率を維持できるというメリットがある一方で、免許取得や教育には、日本人を採用する以上の「手間」と「時間」がかかります。
ただ、適切な採用計画と教育サポートがあれば、そのハードルは大きく下げられます。
「どの業務を任せるべきか」「自社に最適な採用方法は何か」などは、ぜひ弊社までご相談ください。