国内の労働人口が減少の一途をたどる中、物流業界において「いかにして安定的にドライバーを確保するか」は、企業の存続に関わる重要な課題となっています。こうした背景から、新たな採用の選択肢として大きな期待を集めているのが、2024年より自動車運送業(トラック・バス・タクシー)が対象分野に加わった在留資格「特定技能」制度です。
特定技能の中でも特に自動車運送業においては、他職種とは異なる制約や注意点が多く存在するため、採用担当者としては「制度の全容が掴みきれていない」「将来的にどのようなキャリアパスを描けるのか知りたい」といった不安も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、特定技能制度の基礎知識から採用担当者が押さえておくべきポイント、そして将来的なキャリアパスの可能性までを解説します。

「特定技能」とは、国内で人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れるため、2019年4月に創設された在留資格です。
特定技能には「1号」と「2号」の2つの区分があります。特定技能1号は、特定産業分野において相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けで、現在16の分野が対象です。(※自動車運送業は現状1号のみ)
これに加えて自動車運送業分野(ドライバー)で特定技能外国人が就労する場合は、独自要件として以下が定められています。
【自動車運送業の独自要件】
自動車運送業分野で就労する場合、入国後6ヶ月以内に日本の運転免許を取得することが義務付けられています。取得できなかった場合は帰国となってしまうので注意が必要です。※免許取得方法は「外国免許切替」と「教習所で取得」の2つの方法があります。(こちらについては今後のコラムで詳しく解説します)

1号:「現場で働く労働力を、一定期間受け入れること」
深刻な人手不足がある産業分野において、基礎的~中級レベルの技能を持つ外国人を期限付きで受け入れることを想定。
2号:「熟練技能者として、産業を中長期的に支える人材を確保すること」
単なる人手不足対策ではなく、産業の担い手・中核人材としての定着を想定
1号:現場作業を担うプレイヤー
2号:現場を統括できるリーダー・職長クラス
1号:在留期間は通算で「5年」と決められています。どんなに優秀な人材であっても、制度上の変更がない限り5年後には帰国しなければなりません。
※通算=他の職種と合わせて(例:外食業2年+宿泊業2年=残り1年の在留期間)
2号:在留期間に更新回数の上限がありません。 許可を得ることで実質的に定年までの「無期限雇用」が可能になり、日本人ドライバーと同じように長期的なキャリアパスを描くことができます。
1号:原則として家族を呼ぶことは認められておらず、単身での来日となります。
2号:配偶者や子供を日本に呼び、一緒に暮らすことが可能です。生活基盤が日本に固定されるため、人材の精神的な安定や定着が期待できます。
1号:特定技能外国人を雇用する場合、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援の計画を作成・実施することが義務付けられています。
2号:特定技能2号の人材は日本での生活に十分習熟しているとみなされるため、企業側の支援義務はなくなります。

自動車運送業は現状、「特定技能1号」のみとなっていますが、今後「特定技能2号」に追加される可能性は十分にあります。
政府は2023年に、それまで2職種しかなかった特定技能2号の対象を、11分野へと大幅に拡大しました。自動車運送業についても、まずは1号で安全な運行実績を積むことができたら、他分野と同様に2号へ移行できる仕組みが構築される予定です。これが実現すれば、外国人ドライバーの「無期限雇用」や「家族帯同」が可能になります。
ただ、一点、注意が必要なのは、1号期間を満了すれば全員が自動的に2号へ上がれるわけではないという点です。 2号への移行には「熟練した技能」を証明する試験への合格や、一定の実務経験が必要になってきます。将来的なキャリアパスを描く上で、試験合格や実務経験というハードルがあることを念頭に置き、本人の意欲や学習を継続的にサポートしていくことが重要になります。
自動車運送業は現状「1号」のみですが、将来の「2号」解禁を見据えれば、外国人採用は一時的な労働力の確保ではなく、将来の自社を支える「リーダー候補」の育成へと繋がります。
ただし、2号への移行は自動ではなく、試験合格や実務経験といったハードルがあるため、本人の意欲を維持し、技能を高めていける継続的なサポートが欠かせません。長期的な戦力として定着させるためには、将来を見据えた「受け入れ体制」の整備が鍵となります。
「2号を見据えた人材戦略を考えたい」や「長期的に活躍してくれるドライバーを確保したい」とお考えの採用担当者様は、ぜひお気軽に弊社へご相談ください。